甘粛省は中国西北部の内陸、東西の長さ1600㌔、広さ45万平方㍍という広大な領域で、長江、黄河という中国の二大河川の流域が接近する場所に位置する。
省都の蘭州はシルクロードの一つ河西回廊の入り口に当たる。ここから武威、張掖、嘉峪関、そして敦煌へと、約1千㌔に及ぶ道がつながる。
武威は中国観光のシンボルマークに使われた「銅奔馬」が出土した場所。1969年、農民が井戸を掘ったところ後漢時代の将軍の墓室を発見。埋葬品として芸術性の高いこの馬の像が出土したという。
張掖にはチンギスハンの孫、フビライハンが生まれた大仏寺や、赤や茶色の地層が何層も重なる岩山の奇観、丹霞地質公園がある。
嘉峪関は長さ約6千㌔に及ぶ万里の長城の西端。その名を冠した嘉峪関市に位置する。明の時代に建てられた城壁や、遠く安(西安)までのろしを上げ、時の政府に情報を伝達したという長城第一トンがある。世界文化遺産「万里の長城」
(1987年登録)の構成資産の一つ。
敦煌は酒泉市の管轄にある県級市。シルクロードはここから天山北路、天山南路、西域南道の三つの道に分かれる。
甘粛省観光のハイライトが敦煌の莫高窟だ。大小494の洞窟に、4世紀から14世紀にかけての貴重な仏像や壁画が数多く安置、保存されている。最も有名な第96窟は莫高窟で最大、世界でも3番目という高さ35・5㍍の仏像が鎮座する。1987年、世界文化遺産に登録。
東西40㌔、南北20㌔に及ぶ砂山、鳴沙山では、砂漠の中をラクダで散策したり、砂山をそりで滑降したりなどの遊びが楽しめる。砂漠の中には3千年以上も枯れずに水をたたえる三日月型の池、月牙泉がある。
2014年、シルクロードの関連遺産群が「シルクロード:長安―天山回廊の交易路網」の名で世界文化遺産に登録された。省内の遺産の構成要素は
麦積山石窟(天水市)、炳霊寺石窟(蘭州市)、鎖陽城遺跡と墓群(酒泉市)、玉門関・河倉城遺跡(敦煌市)、懸泉置遺跡(同)の五つ。
敦煌市に隣接する瓜州市で2016年、中国最古とみられる玄奘三蔵と孫悟空の壁画が発見された。玄奘三蔵の年にわたるインドへの旅の様子を描いたもので、6枚の壁画全てに玄奘三蔵とともに、白馬を引く孫悟空の様子も描かれている。壁画は11~13世紀の西夏時代の作品とされ、西遊記が書かれた16世紀の明代より前のものだ。