中国のほぼ中央に位置する陝西省。その省都であり、最大都市の西安(旧名・長安)は、秦、漢、唐など王朝の都。アテネ、ローマ、カイロと並ぶ世界四大古都の一つで、遠く西域へとつながるシルクロードの東の起点となっている。
西安には二つの世界遺産がある。一つが「秦の始皇帝陵と兵馬俑坑」、もう一つが「シルクロード:長安―天山回廊の交易路網」だ。
兵馬俑は1974年、農民が井戸を掘削していたところ、偶然発見したという「20世紀の考古学における最大の発見」。秦の始皇帝が絶大な権力を誇示するため、兵や馬の塑像を焼成し、その陵を守らせたといわれる。
展示する博物館は総面積1万4263平方㍍。出土した武士俑だけでも約6千体。ほかに、陶俑陶馬約8千点、青銅器約4万点が発見されている。
秦の始皇帝陵は内城の周囲が2525・4㍍、外城の周囲が6294㍍というスケールの大きな陵墓だ。大きな土の山で、陵の周辺では兵馬俑坑が発見されているのみで、いまだ発掘されていない陪葬坑が多くあるという。
これらは1987年に世界文化遺産に登録されている。
一方、シルクロードの世界遺産は、西安から天山回廊を経て中央アジア(カザフスタン、キルギス)に至る範囲の史跡33カ所。このうち中国国内は22カ所、陝西省は7カ所、西安は5カ所が登録されている。
西安市内にあるのは大雁塔、小雁塔、唐長安城大明宮遺跡、漢長安城未央宮遺跡、興教寺。このうち大雁塔は大慈恩寺の境内にある高さ64㍍の7層の塔で、唐の時代の652年に創建。玄奘三蔵がインドから仏教経典や仏像を持ち帰り、翻訳、保管した場所とされる。塔は登ることもでき、西安の市街地を一望する。
陝西省内の史跡はほかに、張騫墓(漢中市)と彬県大仏寺石窟(咸陽市)。