敦煌は古代シルクロードの交通要所に位置し、古より東西の貿易の中継地であり、また宗教、文化および知識が融合しあう合流地でもありました。
その敦煌市内から東南へ25km、鳴沙山東麓の絶壁上にある莫高窟は「千仏洞」とも呼ばれる仏像の石窟です。
開削は前秦の建元二年(366 年)頃から、現在は大小492の石窟に彩色塑像と壁画が保存されています。
千年にわたって掘られ続けた仏教芸術の聖地であります。莫高窟の北側で発見された石窟は僧侶たちの生活、修行、死後埋葬の場所であり、南側は莫高窟の中心の仏壇窟で祈りの場であります。
石窟の大きさは最大のもので268㎡、最小のものは1㎡未満です。壁画は洞穴の四壁、窟頂と仏龕に、宗教及び世俗生活の様子を表現豊かに描かれています。
すべてを並べると約25kmの長さにも及ぶため「世界画廊」との異名があります。飛び交う飛天(仏教における空中を舞う天女)は敦煌芸術のシンボルです。
塑像はほとんどが仏教の神仏で、仏を中央に弟子や、菩薩が両側に沿って配置される群像になっています。莫高窟のシンボルは9 階建ての楼閣。それは9 階構造の天井とも言うべきもので、てっぺんは断崖と同じ高さです。
楼閣の中にある高さ35.6mの弥勒大仏坐像は、土を盛り上げて形を整え作った石胎塑像で、中国で三番目の大きさの仏坐像です。
専門的研究、発掘、整理及び敦煌文物、文献の保護に関する総合的学科は敦煌学と名づけられ、国際的に注目される分野となっています。