九寨溝は四川省北部のアバチベット族チャン族自治州、岷山山脈の深い渓谷に位置しています。かつては「神話の世界」とさえ称される、手つかずの自然が残る秘境でした。原生林の中にY字の形をした樹正溝、日則溝、則査窪溝という3つの谷があり、谷にそって大小108の湖が点在しています。谷(溝)に9つのチベット族の村(寨)があったことから九寨溝の名がつけられました。九寨溝はもともとチベット民族の居住地であり、マニ車のような水車、ヤクの群れ、五色の経幡(タルチョー)など、チベット民族の風情を漂わせています。
九寨溝を最も有名にしたのは驚くべき水の透明度です。岩に含まれるカルシウムの影響だと言われていますが、鏡のように光を反射して輝く水面はため息が出るほどの美しさです。散策すると同じ場所とは思えない表情豊かな景観があります。現在足を踏み入れられるのは標高3150mの長海までですが、溝の最も奥の標高は4700mにもなります。雄大な山の眺めもこの地の見どころです。山の頂には万年雪があり、年中通して様々な景色を楽しむことができます。
高山植物や漢方薬草の宝庫であり、動物の生存に優れた環境でもあり、年々その数が減っていると言われるジャイアントパンダやレッサーパンダ、金絲猿、カモシカの姿も時々見ることができます。170種類の脊椎動物と141種類の野鳥が棲息しています。