山東省曲阜市にある孔子廟、孔府、孔林は、孔子(紀元前551-前479年)とその末裔を祀る巨大な建築群であります。この三つを合わせて「三孔」と呼ばれます。孔子は紀元前6世紀から紀元前5世紀にかけて、中国春秋時代の偉大な思想家、政治家、教育者、文化人でありました。孔子が樹立した儒学は、東洋の文化圏や欧州の啓蒙運動に多大な影響を与えました。
アジアにはかつて2千以上の孔子廟がありましたが、その中で最も古く、典型的な形式を有するのがこちらです。孔子の旧宅を改築したもので、中国独特のスタイルを有し、荘厳な雰囲気を持っています。百以上の建築物に460以上の部屋が現存しており、中でも正殿である大正殿には孔子の神像が祀られています。また、歴代(紀元前149-1949年)の碑文を記した石板などが1044個現存しており、封建社会の政治、経済、文化、芸術を研究する上で貴重な史料であります。漢の画像石、明・清の雕鐫石柱、明の刻聖跡図など、石で作られた芸術品も多数残されています。
孔府は、孔子の直系が暮らしていた住宅であり、封建社会の貴族型荘園の典型です。480以上の建築物を有し、中国では明、清の皇帝宮殿に次ぐ規模であります。「至聖林」とも呼ばれる孔林は、孔子とその後裔が眠る墓地です。2500年以上にわたり護られてきた孔子一族の墓は10万以上に上り、ひとつの家系が葬られた墓地としては最古、最大の規模です。面積は約2㎢で、墓道は約1.3kmにも及びます。周囲は高い木々で覆われており、自然植物園のような雰囲気が漂っています。