重慶市大足県には唐代末期から宋代に彫られた約5万体余りの摩崖石刻像が41ヶ所に分布しており、それらを総称して「大足石刻」と呼ばれます。
大足石刻は中国古代仏教石刻芸術晩期の代表作で、保存状態は中国の石窟の中で最も良いと言えます。仏教像を主としていますが、儒教・道教の像も刻まれており、またその時代の様々な人物、社会生活の様子を刻んだものもあります。伝来した仏教を土着させ、生活と融合させているのも一つの特徴であります。中でも最も美しいとされる像は、北山と宝頂山にそれぞれ1万体余りが集中しています。
「北山石刻」は大足県城北の1.5kmの北山にあり、像が連々と約300mにわたります。唐の晩期景福元年(892年)から造り始められ、南宋の紹興32年(1162年)の完成に至るまで200余年の歳月をかけました。鑑賞価値が高いものとして、まるで美少女のような「数珠手観音像」や、それぞれ表情が違う20体余りの菩薩像、西方極楽浄土の様子をみせる「観無量寿仏経変相」などがあげられます。現存の彫刻像は4600余りに及び「唐の晩期から宋代の石刻芸術博物館」と賞賛されています。
「宝頂山石刻」は大足県東北15kmにあります。内容にテーマと一貫性があり、絵物語を見るようであります。特に注目される石刻は、全長31mの「釈迦涅槃像」と、背後から1007本の手が伸びる「千手観音像」、手の上に500kgの石塔をのせて800年以上立ったまま倒れない「華厳三聖仏像」などであります。このほかの、道教を体裁として像を造った南山石刻があります。