「中国の南方カルスト」とは、雲南省の石林、貴州省の茘波、重慶市の武隆を代表とする中国南部に広く見られるカルスト地形のことです。
雲南石林イ族自治県に位置する「石林」は世界でも珍しいカルスト地形で、中国では「天下第一の奇観」と言われます。古生代の石灰岩が長い年月をかけて雨水に浸食され形成されています。石の形は様々で、あるものは剣のように青空を指し、あるものはキノコ型、あるものは天を衝く高塔のようで「造型地形の天然博物館」と称賛されています。
貴州省東南部にある茘波県のカルスト地形は、県の20%の面積を占めており、世界最大級のカルスト原始林です。最も目を引く景観は峰叢、峰林カルストと呼ばれる円錐状峰です。大七孔、小七孔は代表的な景勝地です。ここで生活している人の90%が少数民族で、水族の水書、ブイ族の古法製紙などは今も伝承されており、人々を驚嘆させています。珍しい自然の景観に多くの民俗風情が添えられています。
重慶の武隆カルストは総面積3.7㎢の原生林で、主な見どころは3か所あります。「芙蓉洞」には日本の秋吉台のほぼ3倍の鍾乳洞があります。「天坑三橋」は天が開けた穴の名の通り、地中にあった洞窟に上から水が注ぎ込んで浸食されてできた巨大な穴があります。「地縫」には地下深くまで自然に形成された細い渓谷があります。上から見ると樹木や滝で底が見えませんが、底から見上げると細い線のように空が見えます。また、希少動物の生息地でもあります。その形成過程はまさに地球の歴史であるといえます。